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人間的なつながりを分断する資本主義
「私たちは仕事を辞めるのではない。ただその場の人間関係から立ち去るのだ」
上司や同僚が仕事人生に及ぼす影響の強さを示した例としては、500万人を対象に行われたアメリカの調査が有名です。
研究チームは被験者の職場における人間関係を調べ、次の傾向を導き出しました。
- 職場に3人以上の友達がいる人は人生の満足度が96%も上がり、同時に自分の給料への満足度は2倍になる(実際にもらえる金額が変わらなくても、友人ができるだけで給料の魅力が上がる)
- 職場に最高の友人がいる場合は、仕事のモチベーションが7倍になり、作業のスピードが上がる
職場の人間関係ストレス → メンタル悪化・散財 → 会社の給料への依存、という悪循環。
雇われ仕事が向いていない人達が少しでも「自分に合った(マシな)仕事」を見つけようと各々バラバラに動いた結果、人間的なつながりが分断され、人間関係に苦しむことになっているのではないか。
これを解決する案として王道なのは、「雇われ仕事にこだわらないこと」である。
しかし今回は、別の解決策を考案する。
職場に友達がいる状況をうまく作り出せないだろうか。
就職してから社内で仲間集めをすることの難しさ
真っ先に思いつくのは「社内で友達をつくる」ことである。会社側も同僚と仲良くすることを奨励している。しかし、これは実際には難しい。職場というのはみんな保身のために本音を隠して権力に迎合する場所だからだ。
労働者同士で会社(上司)の愚痴を言い合う職場の飲み会でも、強いのは労働者内の多数派である。少数派にとって職場の飲み会は事実上の無賃労働である。普通に残業してる方がマシなレベル。虚無感が半端ない。時計の針がなかなか進まない。これが相対性理論か?
少数派は点在する同志を見つけるのが難しい。みんな仮面をかぶって正体を隠しているからだ。それに、少数派同士なら必ず同志というわけでもない。
昔働いていた会社では奇跡的にも私が転職した直後に業務カイゼン部を立ち上げた者達がいたのでそこで仲良くやっていたが、なかなかそういう機会には恵まれないし、けっきょく職場内では四面楚歌状態であった。
労働組合も多数派が強い。私は長時間労働をなんとかしてほしかったが、労組は賃上げを目指していた。私が最初に働いていた会社は在職中に合併し、合併相手の会社の労働組合に勧誘される形となったのだが、この勧誘の仕方がひどくアコギであった。
「加盟するかは自由」とのたまいつつも、説明会の出口で加盟手続きをするのでめっちゃ断りづらい。考える時間もくれない。完全に「断れない空気」を作りに来る戦術だ。
組合会費として毎月3,000円あざまーすwカツアゲだよくそったれ。敵が増えただけじゃねーか!
職場のルールを決めるのはだれか。会社かそれとも労働組合か。そうやって正面衝突を繰り返していると、いつのまにか会社をやっつけるために会社以上の会社になってしまう。この場合、自主管理は究極だ。権力との「対称的な戦争」は必ずあたらしい権力を生みだしてしまう。
残念ながら「社内で友達をつくる」という試みは、結局は強者に迎合する形での「表面的な仲良しごっこ」に終わってしまいがちである。そんなものは友達とは呼ばん。迎合がメンタルに悪いのは心理学の常識だ。
「自分に合う同僚候補=友達」と示し合わせて就職?
各々が少しでも自分に合う(マシな)職場を求めて散り散りになるのではなく、先に「自分に合う同僚候補=友達」と徒党を組んで、集団で示し合わせて同じ職場(会社)に就職してしまうのはどうだろうか。
誤解のないように説明しておくと、高度専門職業界などで見られるチーム転職とは違う。あれはチームとして生産性が高いことを企業に示すWin-Winな取引だ。
ここで言っているのは、「チームとして幸福度が高いこと(働きやすいこと)」を目指して会社を出し抜く戦略だ。
今後は、同世代が一斉行進して人生のステージを進む仕組みに深刻な軋みが生じる。高いスキルをもった優秀な人材の獲得が必須課題の企業は、その変化に対応して方針を改めることが得策だと気づきはじめる。しかし、そういう企業ばかりではない。働き手が望むほどの柔軟性を発揮できる企業は、おそらく一握りにとどまる。その結果、個人と企業の間で激しい戦いが始まるだろう。それは、産業革命の時代に労働時間と労働環境をめぐって戦われた戦いに匹敵するものになる。
(LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 序章 p.34)
私たちは、会社は主人ではなく取引相手だという意識を持たなければならない。
雇用とは個人 - 会社間のビジネスある。ビジネスに駆け引きは必須である。向こうも今後はますます容赦してこなくなるだろう。
Win-Win or No Deal がもちろん理想だが、なかなか難しいのも現実である。
まあ、徒党を組む友達とはWin-Winになるわけだし、そもそも序盤で述べたとおり「職場に最高の友人がいる場合は、仕事のモチベーションが7倍になり、作業のスピードが上がる」という研究があるのだから、結果的には会社側もWinになる可能性が高いのではないか。
「最初からチーム」は強い
大学での研究室時代の話だが、やはり「最初からチーム」は強かった。私の同期は7人いたが、そのうちの4人が元からつるんでいる友達同士だった。彼らの中に口の立つ商売人の息子がいたということもあるが、完全に彼らが場の空気を掌握してしまっていた。
LIAR GAME(原作)の敵キャラ・ハリモトも、自身が教祖を務める宗教団体の信者達を引き連れてゲームに参加。「最初からチーム」の利点を活かしてゲームを有利に進めていた。余談だが、LIAR GAMEの原作と映像化作品は完全に別作品である。
高校・大学進学で友達と同じ学校を目指すのはよくある話である。クラス替えでも進学でも、「最初からチーム」だと序盤から有利だということは読者の経験にもないだろうか。